三本線

気紛れに細々と書いてます。写真も増やしたいなぁ。

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blood rain

現実逃避の産物。
こういう一人称独白とか、取り留めのない日常場面とか、どの話と繋がるかわからないような設定あやふやな仮話ばかり、ふっと思い立って書きたくなるのです。

見ている人はいないと思うけど。
補足しておくと、前の文章とは別な人です。
前の文章も、この文章も、いつか大本の文章と繋がる日が来るのだろうか……。
遅さで言えば、KHの伏線回収に勝てると思う(笑)
要するに、KHより遅いってことですね……orz(駄)

しかし、両方ともジャンルは一応間違っていないけど、ポの字も出ないなんて……;;






子供の頃から、雨はあまり好きではなかった。
湿気が肌にまとわりつくあの感触も、降り出した時の土から香る臭いも、空を覆い尽くす厚くて暗い雲も、まるで自分が泣いてるのかと錯覚させる降り注ぐような滴も、孤独に感じさせる地に打ち付ける音さえも。
本当に幼い頃は無邪気で楽しい思い出もあったのだが、今はそれを思い出すことは、もうあの頃には帰れない虚しさが漂い苦痛なだけだ。

嫌な予感はしていた。
しかし、これが俗に言う本能だと気付いたのは、出先から帰ってきた後だった。
人間にも未来のような不確かなものを察知できる本能が僅かでも残っているとは思ってもみなかったが、その意味を理解せずとも次の行動に移すという本能は残っていなかったことに、苛立ちを覚えた。
いや、本能が残っていなくとも、思考するという選択肢があったのに、それを選べなかった自分の愚かさに苛立ったのだろう。
どちらにしても、後悔の塊であることに変わりはない。
ここに戻るとすぐに、ある場所へ向かった。
連れていた直属の部下をその場に残し、何重にも厳重に施されたセキュリティーロックをもどかしく解除しながら、目的である最奥の部屋へ全速力で走る。
いくつかのロックを越えると、異常を知らせる赤いランプと耳障りな警告音が作動していた。
そんなのは、ここにいるほとんどの者が何かしらの理由で不手際を起こした際に経験済みなので、正直驚かない。
気にかかるのは別の一点だけ。
何故、誰ともすれ違わない?
途中通り過ぎる際にいくつも部屋を覗いたが、人の影はおろか気配すら感じられなかった。
自分の足音と無意味な警告音だけが、通路に響き渡る。
それがより一層不安を掻き立てる。
震える胸を抑え、疲労を覚え始めた脚を叱咤する。
それでも思わず立ち止まってしまったのは、あと一つ――最奥の部屋のロックを残すのみ、その部屋へ続く唯一の通路のロックを外した時だった。

何かが違う。
見慣れた筈の、この空間の違和感を全身で感じる。
まるで、雨が降っているようだ。
ここは屋内、それも地下深くでそんな筈はないのに、肌で、鼻で、目で、耳で、感じるこれは、似ていると思った。
しかし、それ以上に嫌悪感を覚える不気味な感触。
身の危険を悟ったのだろうか、ここでも現れた本能に少しだけ感嘆しつつ、今度は逸る脳内の片隅で思考してその意味を理解した。
その先の行動に選択肢などない。
進むだけだ。今起こっている事態の元凶であろう部屋へ。
ゆっくりと歩を進める。
鼓動が更に大きく速くなる。
そして、最後のロックに手をかけた。
一つ深呼吸して、ざわめく全身を抑えた。
ロックは見ずとも解除できる、見慣れた部屋だ。
視線は扉へ、その先に広がる空間に向けて、私はロックを外す。
無機質に響く解除音だけが相変わらずだった。

扉を開けた瞬間、雨のそれなど比べ物にならない程の強い臭気が流れ出した。
僅かに混じる金属臭。これは。
足を踏み入れると、水溜まりを踏んだかのように濡れた音がした。
その色が、瞬間頭を掠めた予想が残念なことに当たっているのだと知らしめる。
無機質なくらい装飾も何もないただの真っ白な箱だった部屋は、元の色を一点も残さないまま、真っ赤に染まっていた。
中心に立つのは、やっと見つけた2つの影。
その周りには、壁や床と同じ色で染まった大小様々な塊が積み重なり、散乱していた。

不意に頭上から視線を感じて見上げると、この部屋を上から見渡せる空間――実験操作室からガラス越しに立つ男がいた。
そう、私がいるこの場は実験場なのだ。
上の実験操作室で、ガラス越しにここの様子を見ながら、作業を行う。
あそこに誰かいると言う事は、何か実験をしたということだ。
最高責任者である私が不在の間に、それも一切の許可を取らずに。
そんなことができるのは、ここでは一人しかいない。

「何をした」

目線を部屋の中央に向けて、しかし言葉は頭上の男に向けて。
私の声は上に届いた筈だ、ここはそういう部屋だから。
しかし、この状況を見れば、聞かずとも大方推察できる。
それが間違ってるとは思わないから、これは問いかけでも確認でもない。
ただ、沸き上がる怒りに乗せられて口に出た言葉だ。
表情は見えないが、男の口端が吊り上がり、満足げにほくそ笑んでいる、と視線が告げる。
私が何を考えているか全てわかりきっているのだ、向こうは一切の説明をせず、事の顛末だけを口にした。

「想像以上の成果だ。実験は成功した」

壁に埋め込んだスピーカーですら真っ赤に染まっているにも関わらず、それは普段通り機能していた。
少しくぐもったように聞こえたのは、空気の通り道に異物が入ったからだろう。

程なくして、耳を突く高笑いが部屋中にこだまする。
この声の主が誰かなんて、言うまでもない。
私の視線の先にいる2つの人影は、私の声も、耳障りな笑い声すらも耳に入っていないかのように、ずっとそこに立っていた。
やがて、2つはゆっくりと同じ所作でこちらを振り返る。
初めてこの部屋で赤以外の色を見た。
それでも、その顔には部屋を染めたものと同じものが飛び散り、その全身の半分以上は部屋と同じ色に染まっている。
その手から滴る滴が、実験が終わって間もないことを示していた。
そして、どちらの瞳も今までに見たことがない程に凍りついていて、感情の欠片も見つけられない。

予感は的中した。
それも、考えうる最も最悪な状況で。
POKE
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